住んでいる市町村に病児保育施設がない状況は珍しくない
こども家庭庁の調査では、病児保育施設が自市町村にないと答えた市町村は39.6%で、企業主導型や市町村独自型を含めても36.0%にのぼり、別の制度を確認する必要がある。
この結果は保護者側の実態とも重なる。病児保育を利用したことがない保護者1,728件のうち、利用方法までよく知っていた人は14.8%にとどまり、「名前は知っているが利用方法までは知らない」が51.4%、「全く知らない」が33.9%だった。利用したいと答えた人は35.8%で、その理由として最も多かったのは「職場が忙しかったり、代わりに頼める人がいない等により、仕事を休みにくいため」の56.9%だった。これらの数値は、こども家庭庁が実施した令和5年度の調査研究事業(市町村1,068件、保護者2,000件の回答)に基づくものであり、全国の現在の状況や個別の地域の整備状況を示すものではない。
病児保育の利用実態に関する国の調査(令和5年度)
保護者アンケート(2,000件)では、子どもが病気で通園・通学できず対応に困った経験が「ある」が47.3%、病児保育を「利用したことがある」が13.6%だった。利用したことがない層では、認知度の低さと「休みにくさ」が利用意向を持つ理由の中心になっている。一方、市町村アンケート(1,068件)では、交付金対象の病児保育施設(病児対応型・病後児対応型)が無い市町村が39.6%、企業主導型・市町村独自型も含めて無い市町村が36.0%だった。いずれも調査時点・調査対象に基づく結果であり、現時点の整備状況を保証するものではない。
病児保育事業(国の実施要綱)
こども家庭庁の実施要綱(令和6年4月1日適用、令和7年3月31日に一次改正)では、病児保育事業の実施主体は市町村とされ、市町村が認めた者への委託等も可能とされている。対象は、保育を必要とする乳児・幼児、または保護者の勤務や疾病等の事由で家庭保育が難しい小学生で、疾病にかかっている児童。対象とする年齢・学年の範囲は市町村の運用により異なる。
事業の類型は4つある。病児対応型は、児童が病気の「回復期に至らない場合」で当面の症状の急変が認められない場合に専用施設等で一時的に保育するもの。病後児対応型は、児童が病気の「回復期」であり集団保育が困難な期間に行うもの。体調不良児対応型は、保育中に微熱など「体調不良」となった児童を、保護者が迎えに来るまで緊急的に対応するもの。非施設型(訪問型)は、「回復期に至らない場合」または「回復期」の児童の自宅で一時的に保育するもの。
職員配置は、病児対応型・病後児対応型が看護師等を利用児童おおむね10人につき1名以上、保育士を利用児童おおむね3人につき1名以上。体調不良児対応型は看護師等1名に対し体調不良児2人程度。非施設型(訪問型)は研修を修了した看護師等・保育士・家庭的保育者のいずれか1名に対し児童1人程度とされている。
利用の進め方として、病児対応型・病後児対応型・非施設型(訪問型)では、対象児童をかかりつけ医に受診させたうえで保護者と協議し、受け入れや訪問を決定する。医療機関でない施設が実施する場合は、診察した医師が入院の必要がない旨を署名した連絡票で症状を確認してから決定する。症状の判断自体は制度の説明の範囲を超えるため、かかりつけ医に確認してほしい。
利便性の確保として、病児対応型・病後児対応型では空き状況を見える化した予約システムの構築などが挙げられており、複数施設がある場合は重複予約を避けるためICT活用や前日の利用有無の再確認といった対応策を講じることとされている。また受け入れに際しては、施設が予防接種の状況を確認し、必要に応じて助言することとされているが、これは接種を利用の条件とするものではない。費用については、事業に必要な経費の一部を保護者負担とすることができるとされているのみで、具体的な金額は要綱に定められておらず、実際の利用料は実施する市町村・施設ごとに異なる。
ファミリー・サポート・センター事業と病児・緊急対応強化事業
ファミリー・サポート・センター事業は、児童の預かりを依頼したい会員(依頼会員)と援助を行いたい会員(提供会員)の相互援助活動を市町村が連絡・調整する事業。基本事業では保育施設の開始前後の預かりや送迎などを扱い、報酬は原則として会員間で決定し、会則等で目安を定めることができる。預かる人数は提供会員1人につき原則1人。
これに加えて病児・緊急対応強化事業では、病児・病後児の預かり(必ず実施)、早朝・夜間等の緊急時の預かり、宿泊を伴う預かりなどを行う。病児・病後児の預かりは、預かる前後にかかりつけ医に受診させ、保護者と協議のうえ可否を判断する仕組みで、預かりは1人までとされ、医療アドバイザーとなる医師や緊急時の協力医療機関をあらかじめ選定することとされている。この事業を実際に行っているか、行っている場合の条件や報酬の目安は、市町村のファミリー・サポート・センター窓口で確認する必要がある。
代わりの選択肢をどう探せばいい?
住んでいる市町村に交付金対象の病児保育施設がない場合、企業主導型や市町村独自型の病児保育、非施設型(訪問型)、ファミリー・サポート・センターの病児・緊急対応強化事業といった別の枠組みが行われている可能性がある。どの制度が実際に利用できるかは市町村ごとに異なるため、まずは子育て支援の窓口に問い合わせることが出発点になる。
企業主導型病児保育は保育所等に付設された施設で実施される場合があり、非施設型(訪問型)は自宅での保育というかたちをとる。どちらも実施の有無・対象年齢・利用条件は地域差が大きいため、一つの制度が無いからといって他の選択肢も無いと決めつけず、順番に確認していくことが実務上のポイントになる。
実際に動くときの段取り
一般的な確認の流れとしては、まず市町村の子育て支援・病児保育担当窓口に、自市町村での病児保育施設の有無(病児対応型・病後児対応型・体調不良児対応型・非施設型)を確認する。施設がない、または条件が合わない場合は、同じ窓口か別窓口でファミリー・サポート・センターの病児・緊急対応強化事業が実施されているかを確認する。実施されていれば、提供会員の登録状況や医療アドバイザーの選定状況なども窓口で確認する。
利用が決まりそうな段階になったら、かかりつけ医への受診や連絡票の準備など、施設側が求める手続きを確認する。予約の方法(見える化された予約システムの有無や前日確認の運用など)も施設・市町村ごとに異なるため、個別に確認することになる。これらの手順は市町村・施設によって順序や必要書類が異なるため、必ず窓口で最新の案内を確認してほしい。
勘違いしやすいポイント
「病児保育施設が無い市町村」という結果が全国の約4割に及ぶため、施設が無い=利用できる制度が何もないと誤解されやすいが、ファミリー・サポート・センターの病児・緊急対応強化事業や非施設型(訪問型)など別の枠組みが用意されている場合がある。また、病児対応型と病後児対応型は対象とする子どもの状態の類型が異なり、どちらに当たるかはかかりつけ医の判断に基づくものであって、保護者や記事側が自己判断で決められるものではない。
利用料についても、国の実施要綱は保護者負担を「設けることができる」としているだけで金額は定めておらず、実際の料金は実施する市町村・施設ごとに異なる。予防接種の確認も、受け入れ時に状況を確認し必要に応じて助言するという位置づけであり、未接種を理由に一律で利用不可とするものとは限らない。いずれも最終的な判断は施設・市町村に委ねられている。
よくある質問(FAQ)
Q. 住んでいる市町村に病児保育施設がない場合、病児保育はまったく使えませんか。
A. 交付金対象の病児保育施設が無い市町村でも、企業主導型・市町村独自型の病児保育や、ファミリー・サポート・センターの病児・緊急対応強化事業、非施設型(訪問型)が行われている場合があります。実施の有無は市町村ごとに異なるため、お住まいの市町村の窓口で確認してください。
Q. ファミリー・サポート・センターの病児・緊急対応強化事業はどの市町村でも利用できますか。
A. この事業は市町村が実施するかどうかを判断する事業であり、実施していない市町村もあります。実施状況や利用条件、報酬の目安はファミリー・サポート・センターの窓口に確認する必要があります。
Q. 病児保育を利用する前に必ず病院を受診しなければなりませんか。
A. 国の実施要綱では、病児対応型・病後児対応型・非施設型(訪問型)は、かかりつけ医に受診させたうえで保護者と協議して受け入れを決定する仕組みとされています。受診の要否や症状の判断そのものは、かかりつけ医に確認してください。
Q. 予防接種を受けていないと病児保育は利用できませんか。
A. 実施要綱では、受け入れに際して施設が予防接種の状況を確認し、必要に応じて助言することとされていますが、これが利用の条件を一律に定めたものとは限りません。実際の取り扱いは施設・市町村に確認してください。
Q. 自分の市町村に病児保育施設があるかどうかはどこで確認できますか。
A. お住まいの市町村の子育て支援・病児保育担当窓口に確認するのが基本です。ファミリー・サポート・センターを利用したい場合は、同事業の窓口で別途確認してください。
この記事で言えないこと
この記事で紹介した割合や仕組みは、こども家庭庁が公表している調査・実施要綱に基づく一般的な内容であり、お住まいの市町村で実際にどの制度が利用できるか、利用料がいくらか、対象年齢に当てはまるかを断定するものではありません。また、お子さんの症状が病児対応型・病後児対応型のどちらに当たるか、受診が必要かどうかといった医学的な判断も行っていません。
個別の利用可否・料金・予約方法は、お住まいの市区町村の病児保育担当窓口および利用を検討している各施設に直接確認してください。お子さんの症状や受診の必要性についてはかかりつけ医に相談してください。仕事を休む必要がある場合の休暇の取り方については、勤務先の人事労務窓口に確認することをおすすめします。
出典
- こども家庭庁(令和5年度調査研究事業・三菱UFJリサーチ&コンサルティング報告書)
- こども家庭庁(成育局長通知「病児保育事業の実施について」)
- こども家庭庁(ファミリー・サポート・センター事業関連資料)
※本記事は2026-10-07時点で公開されているこども家庭庁・厚生労働省の公表情報および各自治体の公式ページをもとに作成した一般的な制度解説です。病児保育の対象・利用料・減免・登録や予約の方法は市区町村・施設ごとに異なり、記事中の自治体の数値は例示であって全国共通の基準ではありません。本記事は医療に関する助言や診断を行うものではありません。お子さんの症状や受診の判断はかかりつけ医に、利用の可否・料金・手続きはお住まいの市区町村の病児保育担当窓口と各施設に、休暇の取得は勤務先の人事労務担当窓口に直接ご確認ください。本記事は特定の施設・事業者・サービスの利用を推奨するものではありません。


