フリーランス・個人事業主が出産・育児で使える公的サポート|出産育児一時金と国民年金保険料の免除
フリーランス・個人事業主(国民健康保険・国民年金の加入者)は、出産手当金や育児休業給付金といった会社員向けの制度は原則対象外だが、出産育児一時金と国民年金保険料の産前産後期間の免除制度は利用できる。
結論(BLUF)
出産・育児をめぐる公的サポートは会社員(健康保険・雇用保険加入)を前提に設計されているものが多く、フリーランス・個人事業主は「出産手当金」「育児休業給付金」「産前産後休業・育児休業等期間中の社会保険料免除(厚生年金分)」の対象外となる。一方で、健康保険と国民健康保険のどちらの被保険者でも受け取れる「出産育児一時金」と、国民年金第1号被保険者だけが使える「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」の2つは、フリーランス・個人事業主でも利用できる公的制度として押さえておきたい。
フリーランス・個人事業主がもらえるお金・免除の一覧
制度上の対象・対象外は次のとおり整理できる。
| 制度 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 出産手当金 | × 対象外 | 健康保険の被保険者本人が対象。国民健康保険の被保険者は原則対象外 |
| 出産育児一時金 | ○ 対象 | 健康保険・国民健康保険のいずれの被保険者(本人・家族)も対象。雇用形態を問わない |
| 育児休業給付金 | × 対象外 | 雇用保険の被保険者が対象。雇用保険に加入していないフリーランス・自営業は対象外 |
| 産前産後休業期間中の社会保険料免除 | × 対象外 | 健康保険・厚生年金保険の被保険者(会社員等)が対象。国民年金第1号被保険者は別制度 |
| 育児休業等期間中の社会保険料免除 | × 対象外 | 同上。厚生年金保険の被保険者が対象 |
| 国民年金保険料の産前産後期間の免除制度 | ○ 対象 | 国民年金第1号被保険者(フリーランス・自営業・学生等)が対象 |
一言でいうと、「健康保険」や「厚生年金保険」「雇用保険」に加入していることが条件になっている制度はフリーランス・個人事業主には適用されず、「国民健康保険」「国民年金」の枠組みで用意されている制度だけが使えるという構造になっている。
各制度の詳しい内容
出産育児一時金(○ 対象)
出産育児一時金は、2023年4月1日以降の出産について、産科医療補償制度に加入している医療機関で在胎週数22週以降に出産した場合は50万円、産科医療補償制度未加入の医療機関での出産や在胎週数22週未満での出産の場合は48万8000円が支給される。妊娠85日(4か月)以降の出産であれば、早産・死産・人工妊娠中絶を含めて対象になる。また、健康保険の資格を喪失した後でも、資格喪失日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失後6か月以内に出産した場合は本人分(家族分は対象外)が支給される。
受け取り方については、出産育児一時金を協会けんぽ等から医療機関へ直接支払う制度があり、出産費用としてまとまった額を事前に用意する必要がない仕組みが用意されている。手続きの詳細は加入している国民健康保険の窓口(市区町村役場)に確認するのが確実だ。
国民年金保険料の産前産後期間の免除制度(○ 対象)
この制度は、国民年金第1号被保険者(フリーランス・自営業・学生等)で、出産日が平成31年(2019年)2月1日以降の方が対象で、平成31年(2019年)4月から開始している。免除される期間は、単胎妊娠の場合は出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間、多胎妊娠の場合は出産予定日または出産日が属する月の3か月前から6か月間となる。
届出は出産予定日の6か月前から可能で、住民登録している市区町村役場の国民年金担当窓口へ郵送または電子申請で行う。この免除期間は保険料納付済み期間として老齢基礎年金の年金額に反映される点が特徴で、単に支払いを先延ばしにする猶予とは異なり、将来の年金額が目減りしない免除制度として、フリーランス・自営業でも使える数少ない産休関連の公的サポートといえる。
対象外となる4つの制度について
出産手当金、育児休業給付金、産前産後休業期間中の社会保険料免除、育児休業等期間中の社会保険料免除の4つは、いずれも健康保険・厚生年金保険・雇用保険といった、会社員が加入する制度への加入を前提としているため、国民健康保険・国民年金のみに加入しているフリーランス・個人事業主は対象外となる。これらの制度を利用したい場合は、会社員として雇用され、各保険に加入する必要がある。
配偶者やパートナーの状況で変わること
共働きで配偶者が会社員(雇用保険加入)の場合
自分自身がフリーランス・個人事業主であっても、配偶者が雇用保険の被保険者であれば、配偶者側は育児休業給付金や、産後パパ育休(出生時育児休業)にともなう出生時育児休業給付金の対象になり得る。出生時育児休業給付金は、子の出生後8週間以内に産後パパ育休を取得した雇用保険被保険者(主に父親が対象。要件を満たせば養子縁組里親等の母も対象)が対象で、休業開始時賃金日額に支給日数(28日が上限)と67%を掛けた額が支給される。あわせて出生後休業支援給付金は、父親は子の出生後8週間以内、母親は産後休業後8週間以内に14日以上の育児休業取得が要件となる。これらはあくまで配偶者本人の雇用保険上の権利であり、フリーランス側の国民健康保険・国民年金の手続きとは別に、配偶者の勤務先で確認する必要がある。
パートナーも自営業・フリーランスの場合
夫婦ともにフリーランス・個人事業主の場合、出生時育児休業給付金や出生後休業支援給付金といった雇用保険由来の給付はどちらの側にも発生しない。世帯として使える公的サポートは、出産育児一時金と国民年金保険料の産前産後期間の免除制度に限られる点を押さえておきたい。
ひとり親の場合
出生後休業支援給付金の要件では、配偶者が専業主婦(夫)の場合やひとり親家庭の場合等は、本人のみの育休取得でも要件を満たすとされている。ただし、これは雇用保険の被保険者であることが前提であり、フリーランス・個人事業主のひとり親自身がこの給付を受けられるわけではない。フリーランスのひとり親が利用できる公的サポートも、出産育児一時金と国民年金保険料の産前産後期間の免除制度が中心となる。
申請の流れ
一般的な流れとしては、まず出産育児一時金は、加入している国民健康保険の窓口(市区町村役場)または出産する医療機関に、直接支払制度を利用するかどうかを確認・申し出る。次に、国民年金保険料の産前産後期間の免除制度は、住民登録している市区町村役場の国民年金担当窓口へ、出産予定日の6か月前から届出が可能なので、出産予定が固まった段階で早めに相談するとよい。配偶者が会社員で雇用保険関連の給付を利用する場合は、配偶者の勤務先の人事労務窓口やハローワークが窓口になる。制度ごとに窓口が異なるため、迷った場合はまず市区町村役場の国民健康保険・国民年金の担当窓口に問い合わせるのが実務的な入り口になる。
よくある質問(FAQ)
Q. フリーランスでも出産育児一時金はもらえますか。
A. もらえる。健康保険・国民健康保険のいずれの被保険者(本人・家族)も対象で、雇用形態は問われない。金額は出産する医療機関が産科医療補償制度に加入しているかどうかや、在胎週数によって50万円または48万8000円のいずれかになる。
Q. フリーランスは育児休業給付金を受け取れませんか。
A. 受け取れない。育児休業給付金は雇用保険の被保険者が対象の制度であり、雇用保険に加入していないフリーランス・自営業は対象外となる。
Q. 国民年金保険料の免除は、いつから届出できますか。
A. 出産予定日の6か月前から届出が可能。住民登録している市区町村役場の国民年金担当窓口へ、郵送または電子申請で行う。
Q. 国民年金保険料が免除された期間は、将来もらえる年金が減りますか。
A. 減らない。免除された期間は保険料を納付した期間として老齢基礎年金の年金額に反映される、という制度になっている。
Q. 配偶者が会社員の場合、自分がフリーランスでも配偶者側の育休給付は使えますか。
A. 配偶者本人が雇用保険の被保険者であれば、配偶者側は育児休業給付金や出生時育児休業給付金・出生後休業支援給付金の対象になり得る。ただし、これは配偶者自身の雇用保険上の権利であり、詳細な要件・手続きは配偶者の勤務先やハローワークに確認する必要がある。
この記事で言えないこと
この記事は制度の対象・対象外と、公表されている一般的な仕組みを整理したものであり、個別の受給額の試算や、特定の保険会社・金融機関の商品についての優劣判断はできない。世帯の収入状況や加入期間、出産時期などによって適用される内容は変わるため、具体的な金額や手続きの詳細、税務・年金の個別試算については、健康保険組合、国民健康保険・国民年金の窓口(市区町村役場)、年金事務所、ハローワーク、勤務先(配偶者を含む)の人事労務窓口、または社会保険労務士・税理士といった専門家に個別に相談してほしい。
※本記事は2026-08-21時点で公開されている厚生労働省・全国健康保険協会(協会けんぽ)・日本年金機構の公表情報をもとに作成した一般的な制度解説です。制度の要件・金額・支給率は改正される場合があり、加入している健康保険組合や勤務先の規定によって手続き方法が異なることがあります。実際の受給可否・金額は、必ずご自身が加入する健康保険組合・年金事務所・ハローワーク、または勤務先の人事労務担当窓口に直接ご確認ください。本記事は特定の保険商品・金融商品の加入を推奨するものではありません。



コメント